不当労働行為救済申立書

2009年4月15日
福岡県労働委員会会長 殿

フリーター非正規雇用労働者ユニオンふくおか
執行委員 上村 陽一郎

労働組合法第7条第1号及び2号違反について、労働委員会規則第32条の規定により、下記のとおり申し立てます。

申立人
(〒810−0001) 福岡市中央区天神4丁目9−12光ビルタリふくおか気付 フリーター非正規雇用労働者ユニオンふくおか
執行委員 上村 陽一郎 TEL 090−9980−2106 FAX 092−663−0013

被申立人
〒430-8665 静岡県浜松市中区寺島町200番地
河合弘隆 TEL 053-457-1213  FAX 053-457-1300

1 請求する救済内容

(1)被申立人は、組合員Q氏に対する2009年2月14日付契約打ち切りの通知を撤回し、2009年4月以降の雇用を継続しなければならない。
(2)被申立人は、申立人が申し入れた2009年2月24日付けの団体交渉を正当な理由なく拒んではならない。

2 不当労働行為を構成する具体的事実

(1)当事者
ア 申立人フリーター非正規雇用労働者ユニオンふくおか(以下、組合)は、2006年6月1日付で結成された個人加盟方式の組合であり、申立時の組合員数は23名である。

イ 被申立人(以下、会社)は、〒430-8665静岡県浜松市寺島町200番地に本社を置き、楽器の販売及び音楽教室等の運営を営む株式会社であり、従業員数は単体: 1,955人、連結: 2,907人(2007年3月31日現在)である。

(2)会社とQ組合員との労務提供にかかわる事実
ア 2007年11月上旬、Q氏(以下[Q組合員]という)は会社の面接を受け、その後ピアノ講師としての採用決定を通知する文書を受け取った。11月14日、Q組合員は、2008年度から河合音楽教室の講師としての就労に関わる事務手続きのための会合に出席し、給与の振込に関する書類に押印した。その場では、会社より次回の研修への出席が求められた他は、契約内容や労働条件等に関する一般的な説明などはなされなかった。

イ 同12月5日、13日、それぞれ河合音楽教室の天神事務所と香椎センター(事務所)にて、Q組合員は研修を受け、また同月の11日、14日、17日、21日には業務引継ぎのためのレッスン見学も行った。Q組合員には、これらへの参加が契約された業務の一環であることを疑う余地はなかったが、これらついては交通費のみが支給され、研修や業務引継ぎのためのレッスン見学の対価が支給されていない。

ウ 同25日、Q組合員は研修に参加した。Q組合員は、その日に会社との間に委任契約を締結する予定であるとの説明を会社から事前に受けていたが、会社側の担当者山根剛からは、契約を締結すれば、講師研究会の会費や有料研修の費用等が報酬から天引きされることになり、給与が少額になるので、それを避けるために正式な契約締結までは「臨時雇用契約」という形での扱いにするとの意志が口頭で伝えられた。Q組合員は、書面での契約締結を希望したが、山根はこれを拒否した。

エ Q組合員は、2008年2月2日から毎週土曜日、10時から18時に「筑紫ベレッサ」教室での受付業務に従事することになった。就労条件は時給700円の雇用であった。この労働についての契約書は存在せず、事前に山根からの口頭での指示ないし確認がなされたのみであった。またQ組合員は、1月24日、2月3日、同月17日に大橋教室で、19日天神事務所で行われた「春の音楽祭」の合同練習に参加したが、これについては給与が支給されていない。

オ Q組合員は舞鶴のキリスト教会館で会社と正式に「委任契約」(甲第1号証)を同年4月1日付で締結した。契約締結に際して会社は、業務内容や各種研修への参加等に関連する事柄ついては講師に対して特別な説明はしなかった。

(3)Q組合員の会社に対する質問、異議申立と組合加入
ア 2008年4月8日、会社は講師会合においてQ組合員を含む数名の講師に対して、1会社が各講師に出席を促す研修には有料のものがあること、21年目の講師は先輩講師からのレッスンを受けなければならず、それが有料であること、3講師は、年1回開催される講師研究会の会費3千円を毎月給与から天引きされること、4グレード認定試験が有料で行われること5教材が買い取りになることを説明した。

イ 同年4月Q組合員は、研修や先輩講師から受けることが義務づけられていたレッスン(先輩講師が新人の講師に対して行うレッスン)等が有料であることについて疑問を持ち、会社からの説明を求めて、数度にわたり直接の上司であるカワイ音楽教室福岡事務所正社員 山根 剛や同嘱託講師 志岐 由里子、同専任課長 江頭 利幸などと面談した。その結果、Q組合員は、会社からすべての研修は任意であり、強制ではない旨の説明を受け、当面研修やレッスンを受ける意志のないことを会社側に伝えた。会社はその後、Q組合員が研修やレッスンを受けないことを理由に、Q組合員のレッスン(Q組合員が音楽教室の生徒に対して行うレッスン)を視察することを伝えた。

ウ 同年6月10日の講師会合で、会社はQ組合員に対して、講師研究会に出席する旨の書類に押印することを要請した。Q組合員は講師研究会に入会する意思がなく、入会申込書(甲第2号証)に押印もしていなかった。しかし、既に講師研究会の費用3000円はQ組合員の給与から天引きされていた。これらの経緯から会社への不信を新たにしたQ組合員は組合に相談し、同年6月13日組合に加入した。

エ 同年7月1日直接の上司である山根と志岐は、講師研究会への参加についての合意書に7月10日までに押印すること、また、レッスンや研修を受けないのであれば、それ相応の実力があるかどうかテストすること、テストの日程は追って通知する旨をQ組合員に伝えた。

オ 同年7月4日、組合は河合楽器九州支社 地域政策推進室音楽教室指導主事、福井 寿行に電話連絡をとり、Q組合員が組合に加入したことを通知し、講師研究会の入会が任意であること、研修やレッスンの出席も任意であることを確認した。福井はどちらも任意であることを認め、天引きされた給与は返済すること、以後研修を受けるか受けないかはQ組合員の意志にまかせることを明言した。

カ 同年7月9日、会社はQ組合員に対して、課題曲を録音したテープを提出することを要求した。同年8月6日、山根は、課題曲が提出されていないので早く提出するようにとの主旨のメールをQ組合員に送った。同年8月8日組合は福井に電話連絡をとり、提出したテープの内容が就労に何らかの影響を及ぼすのか、また、来期の契約更新に影響を及ぼすのかを質問した。福井は、テープの内容によってはQ組合員を指導することはあるが、それが就労条件、来期の契約更新等には影響を及ぼさないと回答した。

キ 同年8月10日、会社はレッスンを受講していない講師に対して、講師の演奏能力、教材の理解度を会社が把握しておくために課題曲を録音したMDなどを提出するよう求めた文書をQ組合員に郵送した。(甲第3号証)

(4)会社の団体交渉拒否
ア 組合は、同年9月22日付で、会社に対しQ組合員の就労実態は「雇用」であり、会社と講師とは本来雇用契約を締結すべきであるとの見解を主張し、これに対する会社の弁明を求め、また、研修やレッスン、グレード認定試験を無料にすること、Q組合員の契約を更新すること、以上の論点について団体交渉に応じることを求める要求書(甲第4号証)を提出した。

イ 会社は、同年10月30日付で、「団体交渉」は受けないが、「話し合い」ならば応じる旨の回答(甲第5号証)をなした。

ウ 同年11月20日、河合楽器九州支社にて会社とQ組合員を含む組合員9名との1回目の面談が持たれた。会社はこの面談が「話し合い」である旨を主張し、組合は会社には団体交渉を応諾すべき法的義務があることを説明したが、会社側は面談が団体交渉としてなされることはあくまでも拒否した。

エ 面談において組合は、1授業の拘束時間や教室の場所等が会社側の指定で決まること、2授業の内容が会社の指定した教科書の内容に沿って行われ、そのために研修の受講が事実上強制されるなど、講師が会社による一般的な指揮命令、指導下で業務に従事していること、3会社側の指定したグレード資格認定などが報酬に反映されることなど、複数の要因から判断するに、講師の勤務実態が「委任」には馴染まないものであり、雇用であるべき旨を主張した。会社はこれらの主張に対して客観的な根拠のある反論をなしえなかった。また、会社はこの面談の場において、Q組合員について生徒への対応などに関して特定の問題等には言及しなかった。会社はQ組合員の来年度の就労希望等を聞いて、来年度の参考にすると回答した。また河合楽器九州支社統括部長 別府 正敏は、組合に加入したことをもってQ組合員の契約更新等に不利益な影響が及ぶことはないことを約束した。

(5) 会社によるQ組合員に対する契約更新拒否通知 ア 12月18日、組合は、1会社のいう「話し合い」は実質上「団体交渉」であるべきことを認めること、2「委任契約」を「雇用契約」に変更すること、3グレード認定試験を廃止して合理的な昇給制度を整備すること、4来期のQ組合員の労働条件などについて明確な回答をなすこと、を求めるために再度の団体交渉を申し入れた。(甲第6号証)

イ 2009年1月24日、会社は、1「団体交渉」は受けないが「話し合い」は受けること、2会社のいう「委任契約」は「偽装的な委任」ではないこと、3グレード制度は合理的であること、4Q組合員が「委任契約」の正当性を認めることが契約更新の前提となること、5ただし、Q組合員の「生徒への対応などを聞き及ぶ限り」では、契約更新は困難であると判断していることなどを、組合に通知した(甲第7号証)。

ウ 1月26日、組合は会社に電話連絡をおこない、Q組合員の契約更新拒否を示唆する回答について、その不当性を主張し、改めて協議を求めた。

エ 1月30日、会社の山根と志岐、江頭とQ組合員との間で、講師の希望等を調査する面接が行われた。通常の面談は講師が来期の契約を継続する意思があるか、勤務地や勤務時間の希望を聞く場である。会社はその場で、これまで一度もQ組合員個人に対して指摘したことのない体験入学の生徒への対応等についてQ組合員を問い詰めた。

オ 1月31日、組合員3名は、Q組合員が契約更新を拒否されるべき正当な理由がないことを確認するため及び会社のホームページに記載してある2月1日からの会社組織の変更(九州支社が関西支社に統合される)によって責任の所在が変化するかを確認するため会社と協議を行った。面談の場において河合楽器九州支社統括部長 別府 正敏は会社組織の変更はあるが、九州の責任者は今までどおり北川 泉であると回答した。また同地域政策推進室音楽教室担当課長 橋本 健次は、講師の契約が契約の文面上は一年契約であるといえども、実際には一年で契約が終了することを前提した運営はなされていないこと、年度末の講師との面接は、講師の就労に関する希望を調査し、新たな講師募集の必要性等を判断するために開催するものであり、特に契約の履行が困難となるような重大な問題がない限り、契約は原則として更新されるべきものであり、またそのような原則に基づいて大多数の講師の契約は更新されていることを明言した。

(6)契約更新拒否通知と北川支社長の認識
ア 2月13日、組合と会社との面談がなされた。これには元の九州支社(2月1日に関西支社に統合)において講師との契約・人事にかかわる最終責任者である北川泉関西副支社長が出席した。
 Q組合員について「契約更新が困難である」と判断するにあたっては北川副支社長がその判断の最終責任者であることが確認された。契約更新拒否の理由としては、12008年3月に教室として使用していた幼稚園の園長から、楽器の後片付けに関するクレームがあったこと、2新規開校教室で「体験入学」した生徒11人のうち4人しか正式に入会しなかったことなど、Q組合員の生徒獲得率が低いこと、3生徒の出席率が悪いこと、などが挙げられた。また、4音楽教育事業全体が不振であること、5Q組合員が研修などに出席せず、技量を高める努力が見えなかったことなども、理由として挙げられた。

イ 組合は、これらの理由に対して概ね以下の通り反論したが、会社は何ら反論できなかった。

 1 は契約を結ぶ前のことであり、契約打ち切りの理由にはならない。これについては北川支社長自ら組合の主張の正当性を認めた。
 2については、それがQ組合員の講師としての資質に本質的な原因があると判断できる材料は皆無であり、また、そのことが契約の履行を妨げているともみなし得ない。3については、特に他の講師に比してQ組合員の担当する生徒の出席率がいちじるしく低いという事実は認められず、また、そのことについてはQ組合員に責任があることも会社は一切立証できない。4については、Q組合員の契約更新拒否には事実上整理解雇的な性格があることを示唆するものに他ならないが、会社が新規に講師を募集している事実(甲第8号証)があり、正当な理由となりえない。5については、会社の指示ないし要請によって「技量を高める」ことが求められるなどということは、そもそも会社がその正当性を主張している「委任契約」の正当な在り方と矛盾するものであり、研修を受けないことが契約の履行を妨げるとは到底主張できず、契約更新拒否の正当な理由となりえない。

ウ 2月15日、会社からQ組合員宛に委任契約の更新を見合わせる旨2月14日付けの文書(甲第9号証)が届けられた。

(7)会社の改めての団交拒否とあっせんの不調
ア 2月24日、組合は、再度契約更新を求めるために団体交渉要求書(甲第10号証)を会社へ郵送した。

イ 2月26日、組合に対し団体交渉についても話し合いについても応じないという会社の回答(甲第11号証)がなされた。

ウ 3月5日、組合は労働委員会に団体交渉の開催と雇用契約を求めるあっせん申請を行い、3月19日あっせんが開かれたが、組合と会社の主張が対立し不調に終わり、あっせんは打ち切られた。

3.まとめ

 2009年2月24日組合が申し入れた団体交渉について、同年2月26日会社の行った団体交渉の拒否は労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。また2008年11月20日の面談で会社はQ組合員が組合に加入したことをもってQ組合員の契約更新等に不利益な影響が及ぶことはないことを約束したにもかかわらず、2009年1月24日の回答で「生徒への対応などを聞き及ぶ限り」という曖昧な理由で契約更新が困難であると主張している。組合員Q氏に対する契約更新を拒否したことは同条1号に該当する不当労働行為であるので、速やかに救済命令を発せられるよう以上のとおり申し立てます。

以上

戻る

inserted by FC2 system