2009年11月9日
福岡県労働委員会
会長 野田 進 様
フリーターユニオン福岡
代表執行委員 上村 陽一郎

準備書面(4)


 福岡労委2009年(不)第5号河合楽器製作所不当労働行為救済申立事件について、下記の通り主張します。


はじめに−本件不当労働行為の本質−

 申立人組合員であるQが、被申立人から不当にも契約更新を拒否され、本審理を開始して半年以上が経過した。この間の調査における被申立人の主張は、事実をねじ曲げるための後付け的、かつ、法律とは無縁の主観的評価に終始している。
 本件の最大の問題は、一労働者であるQと河合楽器製作所という経営者との圧倒的な非対等な関係を会社側が認識せずに、本来対等は業者同士の関係に適用されるべき委任契約を「準委任契約」として偽装的に締結していることから起因する様々な不利益取り扱いである。
 本件申立後、全国のカワイ音楽教室で働く多くの講師から、被申立人による不当・違法な「労務提供」実態に対して、今も尚、申立人への相談や賛同の声が届いている。一講師=一労働者という弱い立場ゆえ、異議を唱えることのできないままにいた講師の声であることを付け加えておく。

第1 被申立人の「偽装委任契約」を上塗りする後付け的主張

1.被申立人主張の契約日時の訂正は違法・不当

(1)公益委員求釈明「実際に締結した日付」とは何か
 被申立人は、5月13日付答弁書第2の2の(2)「会社とQ組合員との労務提供にかかわる事実」において、「オ 2008年(平成20年)4月1日付で委任契約書を締結したことは認めるが、その余は否認する。契約締結に当たり契約書の全文を読み上げて契約の内容を具体的に説明している」とのとおり、4月1日付で委任契約書を締結していることを認めている。にもかかわらず、第1回調査後、公益委員は、「5 Q組合員との間で、委任契約(甲1)を実際に締結した日付を明らかにすること」として、文書での契約とは別に「実際に締結した日付」を求めているが、この求釈明の意図ないしは趣旨については何ら明らかにされていない。
 被申立人は、この求釈明に対して、6月23日付「求釈明に対する回答書」において、「5 Q組合員との間で、委任契約(甲1)を実際に締結した日付について」として、「平成19年10月26日」と回答、さらに、9月19日付準備書面(2)第1の1の(1)の において、「契約した日は、平成19年10月26日である。委任契約書(甲1号証)の作成日は、平成20年4月1日であるが、前年の10月26日に口頭で委任契約を締結している」とのこれまでにない主張をなした。
 2008年4月1日付委任契約書(甲第1号証)が文書として作成されているにもかかわらず、「平成19年10月26日」との何らの根拠のない契約日時を提示することの矛盾を明らかにされなければならない。公益委員においては、これまで主張されたことのない契約日の訂正といった重要なものが、最低限の文書主義にも依らない「口頭で委任契約を締結している」といった法律以前の主張の違法・不当について釈明を求めるべきである。

(2)被申立人の契約手続きそのもの曖昧さと認識の甘さ
 被申立人は、答弁書第2の2の「(2)会社とQ組合員との労務提供にかかわる事実」のアにおいて、「平成19年11月上旬、Qと面接したこと及びピアノ講師としての採用決定を通知したことは認めるが、その余は否認する。
 平成19年9月中旬、委任選考試験を福岡市天神にある「カワイ音楽教室天神センター」において行ったが、Qもその選考試験を受験した。試験内容は、実技、小論文、面接であるが、Qの面接の際、講師の報酬については「固定給ではなく歩合制である。歩合はグレードによって決まる。例えば、(習い始めの子供のピアノ月謝である7000円の月謝の場合約2000円の歩合給となり、生徒が10名いても2万円くらいにしかならない。社会保険はなく、賞与もない」と説明しており、「これでもやっていけますか」と聞いたところ、Qは「それでもやりたい」と答えている。」として、あたかも委任契約の合意がなされたかのような主観的主張をしている。
 ところが一方この主張の直後に、「オ 2008年(平成20年)4月1日付で委任契約書を締結したことは認めるが、その余は否認する。契約締結に当たり契約書の全文を読み上げて契約の内容を具体的に説明している」として、委任選考試験から半年後の4月1日に契約内容を「説明」したとする。また、その後7月28日付被申立人準備書面(1)においては、「Qに対しては、委任契約の内容については、講師選考試験等において十分に説明している」としている。
 さらには、5月13日付答弁書(2)ウにおいて、「Qが書面での契約を希望したことは認め」ているにもかかわらず、その場で書面での契約をなさなかったのである。

(3)更新手続きのずさんさを暴露
 被申立人答弁書第2の(2)「会社とQ組合員との労務提供にかかわる事実」のアにおいて「(平成19年)10月に入り、古川講師が結婚退職のため、同氏が担当していたみかさ幼稚園と松翠保育園の後任講師が必要となり、Qに依頼したところ承諾の回答があった。10月下旬より研修を開始したが、松翠幼稚園は他の講師が引き継ぐことになり、Qはみかさ幼稚園を引き続き担当することになった」とあるように、Qは、採用試験後、急遽、講師として「雇用」されることとなったという経緯があることに争いはない。
 被申立人主張によるならば、上記期間、Qはカワイ音楽教室の講師たる地位については他の講師と同等であり、契約期間については、4月1日付で契約が交わされていることからすれば、10月26日付でなされた契約は3月31日で終了することになる。しかしながら実際には、10月26日から3月31日までの間、Qは研修はおろか講師研究会や講師会議など他の講師に対して課されている労務について一切課されていない。また、年度末に更新の手続きも一切なされないまま2009年4月以降も、カワイ講師として稼働し続けた。
 Qに対する2009年4月1日からの更新手続きについては、Qが契約更新を強く希望したにもかかわらず、被申立人はこれを強い意志で「拒否」している。Qの組合加入前である2008年度の更新手続きは、本件での更新拒否の対応とは大きく異なるといえる。


2.研修の強制性と契約更新拒否理由の後付け

(1)研修の強制性を明確化できない被申立人の主張
 本件において、Qが研修やレッスンの費用が給料から差し引かれることについて疑問を呈したことが本件の発端であることからも、研修の強制性の問題は重要な争点である。
 被申立人は、5月13日付答弁書第2の(3)「Q組合員の会社に対する質問、異議申立と組合加入」のアにおいて「2年目からの研修は有料であるが、なるべく受講するように要請しているものの受講するか否かは講師の判断に任せており、有料研修の受講は任意である」「講師研究会は任意である」「グレード認定試験は任意である」としている。また、7月28日付被申立人準備書面3の(4)において、「被申立人はQに対して、有料の研修や先輩講師の有料レッスンが任意なものであるという説明は行っている」また、「講師研究会への入会が任意であることは、Qに対し説明している」とする。
 しかしながら、この「説明」をいつ、だれが、どのようにしてなしたのかを特定できる具体的日時などは一切主張されていない。
 6月23日付求釈明に対する回答書の「(10)研修を受講しない講師の有無。また研修を受講しな場合の対処にかかる社内規定の有無について」によれば、ほぼ全員が研修を受講していることからも研修制度が実質的に強制されていると言える。
 さらに、9月19日付被申立人準備書面(2)第1の2(1)において、テープ提出による「指導」の存在を認めており、さらに「研修を受けなければ課題曲を録音したもので講師の能力をチェックしようとしたものであることは認め」ており、「研修を受けない場合、レッスンの指導方法についての被申立人の要望や講師の能力について判断ができないために、課題曲を録音したテープを提出させて、講師の能力、問題点を知ることは当然に必要である」としている。また、9月19日付被申立人準備書面(2)第1の1の(3)において、申立人主張の「山根がQをコーヒーショップに誘い、レッスンを受けるように説得したこと」、さらに「山根が、『研修やレッスンを受けないのであればQのレッスンを視察する』と言ったことは認める」としている。
これらの事実関係からすれば、研修の拘束性、強制性は明らかであるが、被申立人答弁書において、申立人申立書に主張する「(福井主事が)テープの内容によってはQ組合員を指導することはあるが、それが就労条件、来期の契約更新等には影響を及ぼさないと回答した」ことは認めている。ところが、後日提出の申立人準備書面(1)において同様の内容を主張した「録音テープでの指導は行うが、これを出さないことでQの就業条件や契約更新に影響を与えることはないと明言したこと」については、被申立人準備書面(1)において否認するという一貫性のない主張をなしている。
 つまり、研修の実態や事実関係からすれば、研修は強制性を持ってなされていることは明らかであるため、被申立人は、これを否定するためにつじつまの合わない主張を繰り返しているに過ぎない。

(2)更新拒否理由と研修問題の関連
 9月19日付被申立人準備書面(2)第1の1の(4)において、「講師報酬のみで生活を維持するのであれば、グレードの等級を上げたり生徒が途中でやめることのないよう努力すべきなのに、Qはそのような努力を一切行わず、講師としての能力が劣っていたので、委任契約の更新を行わなかったのである」とし、第1の3の(6)において、「研修を受けるなり、他の方法で自己の指導力を向上させようとする意欲に乏しく」「グレード等級6級の取得が難しい程度にもかかわらず、技術向上のためのレッスンなどを受けようとしない」といった研修やレッスンを受けていないことをことさらに理由としてあげている。
 被申立人は、これまで講師が研修を受けることが当然であるとしてなしてきており、これを「準委任契約」に反する行為であるとの認識を持っていなかった。そのため、申立人から「研修は任意であるのか」と問われれば「任意である」と答えざるを得ない。ところが、実際に現場でなしている研修は、実態として拒否できないシステムを形成しているのである。


第2 Q組合員はじめカワイ音楽教室講師の労働者性は明白

 労働組合法上の労働者性基準については、塚本重頼著の「不当労働行為の認定基準」(総合労働研究所)によれば「雇用契約ではなく、請負、委任ないし準委任契約によって使用者の業務を遂行する者を包含する」として、「委託契約による保険集金人、週刊誌に掲載する記事の取材執筆を委託されている記者(フリー契約者という)は、給与は原稿料名義であっても一週間サイクルで動く週刊誌記事の素材提供者として会社の業務遂行上、不可欠の要員として継続的に事業組織に組み込まれており、一般社員と同様に、会社の指揮の下に労務を提供している者であるから、使用者はその代表者と団体交渉をする義務を負う」としている。
 以下、このような観点に立った労働委員会命令を列挙する。

・委託契約による保険集金人(横浜中央簡易保険払込団体連合会事件・神奈川昭和53・7・28命令集64集156ページ)

○フリーライター(小学館事件・東京昭和60・9・17別冊中労時報1020号54ページサンリオ事件・東京昭55・8・5命令集68集192ページ、日刊現代事件・東京昭53・2・21命令集63集186ページ)

○「外務調査員」(総合行政調査会地方人事調査所事件・東京地判昭59・11・28労判495号75ページ)

○水道メーターの委託検針員(第一環境事業事件・神奈川昭60・3・28 別冊中労時報1012号25ページ)

○委託契約による製品の修理エンジニア(ソニーサービス事件・大阪昭60・6・4 別冊中労時報1016号23ページ、イナックス事件)

○楽団員の出演契約は、請負名義であっても、その労働力が使用者の営業組織に組み入れられ、使用者の包括的な指示の下に演奏業務に従事しており、かつ、演奏量はその労務提供の対価とみられる場合、楽団員は、「労働者」に該当する。

 上記した基準、観点、判例からすれば、被申立人がいかなる詭弁を弄しようとも、本件カワイ音楽講師の労働者性は明白であり、申立人との団体交渉を拒否する合理的な理由はあり得ない。以下、被申立人の主張をもとに改めてその労働者性の実態を述べる。

(1)契約に至る経緯及び契約書そのものから見える労働者性
 Qのように求人を求めて就職活動をしている大学生ないしは卒業後の者が、講師募集要項(乙第17号証)や求人案内(乙第18号証)などを目にしたときに、これが雇用契約であるか委任契約であるかとった判断をどこでできるだろうか。
 乙2号証の1「2008年度カワイ音楽教室講師採用試験申込書」といった書面を手にしたときに、一般の雇用契約と何ら変わらないと受け取るのが通常である。乙第4号証「採用通知書」にあるように「4 その他の条件」「イ 後日、ご案内する所定の入社教育を全て受講すること」「ロ 入社後、カワイグレード認定委員会の定める、カワイグレードテスト6級を所定の受験資格を満たしてできる限り早い時期に取得すること」といった項目に否応なく承諾しなければ、採用はあり得ないのである。「採用試験」「採用通知」「入社」「入社教育」といった言葉によって受ける印象は、明らかにカワイ楽器への所属を求められているとしか受け取れないものである。
 さらに「誓約書」(乙第4号証)として「私は、カワイ音楽教室担当講師として採用された上は、貴社に定められた諸規定に従い職務を遂行することを誓約いたします」といった文言で、採用通知と引き替えにサインを求められるのである。しかも、第1で述べた被申立人主張に則って言うならば、「10月26日付で口頭で契約した」との日時よりも以前の2007年10月10日付である。
 以上の述べたような経緯を経て、委任契約(甲1号証)を締結することになるが、本調査において明らかになったが、2009年度の委任契約書は2008年度の内容を大きく改定しているが、さらにその労働者性は強まっていると言える。以下、指摘する。

注:新・旧では甲と乙が入れ替わっている。
○新・旧第1条(目的)には、「(講師は)善良な管理者としての注意義務を持って受任した業務を遂行します」との文言が付け加えられている。
○旧第3条(教育指導業務)の「(1)甲が定めるレッスン時間と回数による教育指導」を「乙が定めるコース・教材・教室・レッスン時間と回数」と被申立人が決定する内容が増えている。
○旧3条1(3)の「生徒募集・退学防止」については、新11条(付帯業務)に移行している。
○旧3条2項「会合・研修会への出席」は、新6条(会合・研修会)「甲は教育指導業務を遂行するに必要な業務調整や事務手続き等のために、乙が定期的に開催する講師会合および委任業務遂行のための研修会に出席するものとします」として項を起こしている。
○旧3条3項レッスンの開催日の変更については新8条へ移行して、「甲は、やむをえない事由により生徒指導が困難な場合には、乙と十分な連絡調整の上、自らの責任において生徒ならびに教条側の了承の基に、講師及びレッスン日時の変更等の手続きを遅滞なく行わなければなりません。ただし、甲が手続きを行える状況下で無い場合は乙がこれを行うものとします。」との但し書きがついている。
○旧4条(付帯業務)は新11条となり、旧契約書では入金処理、イベント業務依頼、商品の販売の3つであったのが、(1)生徒募集(2)生徒管理、退学防止への協力(3)イベント業務への協力(4)販売業務への協力(5)入金事務処理の受託(6)地域指導講師の代理・コースリーダー等の教育指導業務と6項目に増えている。また、付帯業務への報酬の支払いが規定されている。旧4条1項の「確実に実施する」という文言は削られている。

○旧5条(報酬)は、新9条「乙の指導資格級に基づく担当生徒授業料の歩合額合計」(1項1)「担当生徒一人当たりの歩合額単価は、甲において別途定める「カワイ講師資格認定制度」に基づくし確認低級に対応して算出する」(1項3)が「甲の担当する生徒の授業料に対し、甲の取得するカワイグレードテスト認定級に基づく、乙が別途定めるレッスン報酬額をしはらうものとします」と変更。
○(受任者の報告及び受領物引渡しの義務)との項が、新5条において旧契約書に新たに追加された。
○(健康管理)新7条は、旧契約書には存在しなかったが、新契約書において追加された
○(契約の解除・解約)旧10条「甲は乙に次の事由が発生した場合には、予告の有無にかかわらず、本契約を解除するとともに、甲に損害が発生した場合には乙に対し、その損害の賠償を求めることができるものとする」が、新13条「甲または乙は、次の事由が発生した場合には、予告の有無にかかわらず本契約を解除するとともに、損害が発生した場合には相手方に対してその損害の賠償を求めることができるものとします」
○旧8条「甲は乙が現在の所属地区の管轄地域外に転居した場合は、原則として本契約を解除するものとする」は、新13条2「乙は、甲が現在の所属地区の管轄地域外に転居し委任契約時のレッスンが不可能となった場合には、本契約を解除するものとします」として、転居した場合には、契約が解除されることになった。
○(契約期間)旧12条「本契約の期間は〜1年間とし、契約を更新する場合は新たな契約を締結するものとする」が、新14条「本契約の期間は4月1日から3月31日までの1年間とし、更新せずに期間満了により終了します。なお、期中に委任契約を締結した場合であっても、契約期間は最初の3月31日までとします」となり、新契約書では1年で契約が切れることが明記。契約更新および契約更新基準については14条2項に「甲が、乙の音楽業務及び付帯業務に関する委任契約を希望する場合には、乙は、そのときの経営方針、生徒の状況、社会情勢及び甲のそれまでの実績・能力・資質等を勘案し、乙の音楽教育業務に必要と判断した場合には、新たに委任契約を締結するものとします。」と改定されている。

(2)レッスン場所の拘束性
 6月23日付求釈明に対する回答書の「1 カワイ音楽教室のシステムについて」(1)の?によれば、「委任講師の自宅におけるレッスンは行っていない」としている。レッスン場所を限定することは、労働者性を高めることであるが、自宅レッスンを認めていないことについての理由は明らかにされていない。
 同上「(5)生徒を担当する講師の決定方法について」の?及び「(7)講師の急病時の措置について」によれば、最終的に被申立人が「後任講師には講師が担当する教室は、会社が講師を選定して決定する」こととなっている。また、同上「(6)講師による各回レッスンの日時の変更の可否」によれば、レッスン回数が会社によって決められ、日程の調整のみが講師に任されているが、「理由のない限り急遽変更しないよう講師へ伝えてある」とされている。結果、講師の決定及びレッスンの変更についての権限は、講師にはなく被申立人がなしているということである。

(3)不更新の例にも明らか
 7月28日付被申立人準備書面(1)第1の9によれば、不更新の例として「ヤマハとの契約を当方には内緒で進め、ヤマハの研修にも参加したため(秋田)」とあり、この理由は、講師の専属性を証明する事例と考えられる。
 
(4)契約内容の変更について
 被申立人は、6月23日付求釈明に対する回答、「(4)講師との委任契約内容の個別的な変更の可否について」において、「いままで、委任契約内容を個別的に変更して欲しいとの申し入れはないが、本人から契約内容の変更の申し入れがあれば、変更することも可能である」としている一方で、7月28日付準備書面(1)においては「報酬については講師間の平等を確保する必要性から、被申立人が決定した報酬の基準を講師希望者に提示して、それに同意した者との間で委任契約を締結せざるを得ず、このような報酬額の決め方には合理性があり」として、「報酬をアップさせるにはグレード受験以外に存在しない」としている。

2.小括
 上記してきたように被申立人はことさらに「雇用契約」としての実態を晒しているにもかかわらず、「委任契約」にこだわり続けるている。ここで、その真意が改めて問われねばならない。雇用関係であれば遵守しなければなばらない「労働法」というものがあり、最低限の労働者の生活と権利を保障する義務が雇用者に負わされるからに他ならない。これを免れるために、被申立人があくまで「委任契約」と言い募ることの不当・違法について、審問等において明らかにしていく。
 
第3 被申立人に対する求釈明事項

1.10月26日付での口頭による委任契約について
(1)第1で述べた「10月26日付委任契約」とは、いかなる場所で、誰が、 どのようにしてなしたのか、具体的な事実を明らかにされたい。
(2)「アルバイト講師」ではなく「臨時契約」であるとするが、そのような 契約システムについて文書で明示されているものあれば開示されたい。
(3)6月23日付求釈明に対する回答書の「(10)3ヶ月未満の臨時契約 を結んだ講師には、研修制度はない」とあるが、なぜないのか理由を明らか にされたい。また、これを文書として記したものがあれば開示されたい。

2.委任講師が自宅でレッスンをしてはならない理由を明らかにされたい。

3.委任講師が他の会社と契約を結んではならない理由を明らかにされたい。

4.Qの更新拒否の判断及び決定の経緯について
(1)被申立人準備書面(2)第1の3の(4)において、Qの契約更新がで きないという判断についての責任者が北川九州支社長だけでなく「本社の判 断も入っている」とするが、本社のだれといつどのような協議・判断を行っ たのか明らかにされたい。
(2)すべての講師の契約更新について、本社の判断を仰いでいるのか明らか にされたい。ちなみに、2009年1月24日付「要求書に関する弊社の見 解」(甲7号証)において、「以上の対応は委任契約者全員に対して普遍的な ものであり」とある。
(3)講師との契約更新の判断にかかる基準(規程、運用内規などの有無)に ついて、「慣行として取り扱っている」とするが、慣行とは明文化されたも のはないという意味が明らかにされたい。

5.2009年度の講師委任契約書を改定した理由、趣旨を明らかにされたい。


第4 被申立人の証人申請への異議申立

 被申立人は、本件の正当性を立証するために橋本氏健次氏のみ申請している。しかしながら、本件において当時九州支社地域推進室音楽教室担当課長であった橋本健次氏は、Q及び申立人組合との直接的な接触をなしておらず、被申立人における講師との契約等に関する権限と責任を有するものではないことは明らかである。立証趣旨も何ら具体性のないものであり、到底承服できるものではない。
 このような証人申請自体、これまでの調査の場に被申立人責任者が出席していないこととともに、被申立人が真摯に本件を解決する姿勢にないことを示すものであるにもかかわらず、証言者として適格でない申請を認めた審査委員の判断に異議を申し立てるものである。
 直ちに、被申立人に対して適格な証人の申請及び尋問事項書を提出を求めるよう申し立てる。
   
以上


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