2009年8月3日
福岡県労働委員会
会長 野田 進 様
フリーターユニオン福岡
代表執行委員 上村陽一郎

準備書面(2)


 福岡労委2009年(不)第5号河合楽器製作所不当労働行為救済申立事件について、下記の通り主張します。


第1 被申立人による不当労働行為の事実

 被申立人は、申立人2008年12月18日付要求書に対する2009年1月24日付「要求書に対する弊社の見解」(甲7号証)として、「Q講師との契約更新についても、Q講師が現在の契約を『委任契約』であると認めなければ契約更新はできないということになりますし、契約更新後も同契約を雇用契約にせよという要求はしないということが前提になります」、さらには、「まずはQ講師自身が、更新する契約が実質的にも『委任契約』であると認めた上」で、「契約更新に値するかどうかを判断する」としている。
 申立人及びQは、Qと被申立人との契約は実質的に雇用契約であるとの異議申立をなしてきたものであり、この被申立人の「見解」は、「申立人が雇用契約を求める要求を撤回しなければ契約を更新しない」ことを、申立人に対して「通告」したものに他ならない。この被申立人の「見解」こそが、被申立人が申立人組合に加入したQ及び申立人を嫌悪し、Qを排除しようとした事実そのものであり、明白な不当労働行為である。
 以下、この「見解」に至るまでに、被申立人が如何にQを排除しようとする意図を有していたかを、これまでのQ個人としての異議申立及び申立人との団体交渉(カワイは団体交渉とは認めておらず「話し合い」としているが)等の経緯を通じて明らかにする。

 
1.Q個人による申立人組合加入前の被申立人に対する異議申立

(1)2008年4月10日の被申立人福岡事務所職員山根剛氏(以下、山根)との話し合い
ア Qは、2008年1月から3月まで臨時的にカワイ講師として働いていた間の研修や「春の音楽祭」の合同練習に対する対価が支払われていないことに疑問を持ち、直接の上司と認識していた山根や嘱託講師志岐などに相談を持ちかけたりしていた。そのようなQに対して、山根は「あなたは私の言うことを聞いてくれると思っていたが、そうではなかったようだ。全然、言うことを聞かない人だった、とても気に障る」というような発言をぶつけていた。

イ Qは、4月1日で正式な契約を締結した後、4月8日の最初の講師会合において初めて正式に有料の研修やグレード認定試験、講師研究会の会費を天引きされることを知らされ、4月10日に、福岡事務所のレッスン室で、山根がQの疑問に応じるための場を設定された。

ウ Qは、「講師としての研修、レッスンを受けるのにお金を取るということが企業としてどうなのか」と率直な疑問をぶつけたが、山根は「常識をどこに置くかの問題」と言い放ち、「カワイは民間企業なので、利益を求める。経営していかなければならないという会社の性質がある」といった会社側の利益のみに依拠した説明しかなさなかった。

エ まず、「春の音楽祭」のための練習に対して手当てが出なかったことについて、山根は「規定40回のレッスン以外に関しては、『カワイとしてやってください』ということは言っていない」ことを手当てを出さない根拠としてあげた。

オ Qが筑紫野ベレッサに固定電話を置いていない理由を尋ねたところ、山根は経費がかかるので設置できないと回答した。また、事務所に連絡する際の電話代は、支払う項目がないと回答した。

カ Qが「なぜカワイは講師と委任契約を結んでいるのか」尋ねたところ、山根は「あなたにお話しなければならないことですか」と回答を一旦は拒否し、その後「時間の拘束が社員ほどはされない」という曖昧な理由のみを挙げた。

(2)4月19日、福岡事務所専任課長江頭(以下、江頭)及び山根とQの話し合い

ア 山根との話し合いの後、Qが納得していないままであったので、改めて事務所の管理職的立場にある江頭課長を同席して、話し合いを行った。

イ Qは、研修やレッスンを行うことそのものに疑義や異議をもつものではなく、有料であることについて疑問と異議を唱えたところ、江頭より「レッスンについて費用がかかるのは、指導する先生に払うお金がいるためである」という説明がなされた。また、江頭、山根より、レッスンを受ける意味として、「会社の教え方、解釈を理解してもらいたい」ため、また「中級クラスになってくれば、大変な内容になってくる」ためであると説明された。
さらに江頭は、「会社の方針に沿って教えることができれば、きちっとうちでしていただきたいということを、していただくということを、あなたから言ってもらえるんだったら、別段レッスンを受けてくださいと彼(山根)も言わないと思います」と応えた。

ウ その上で、江頭は、レッスンを受けない場合は、「きちんとした形でレッスンをしているかどうかというのは、確認させてもらわないと困ります」、「教室をたくさんしてもらうためには、全然そういうことはしない(レッスンを受けない)んですと言われたら、なかなかこちらは、生徒さんの導入はしにくくなりますよね」、「そのこと(レッスンを受けたくないということ)に対しては、上との報告はさせてもらいます」と発言した。。
 
エ レッスンを受けなかった場合の処遇については、江頭は「どうするかということを上申しなければなら」ず、「先生との雇用問題ですね、…すべて人事の方が握っている」ため、即答はできないとした。ただし、山根は「(レッスンを)受けなければ解雇になるかと言えば、それはならない」との発言をなしている。

オ 「春の音楽祭」の業務手当に付いては、「合同練習はレッスンにカウントされない」ため手当は出ないと、前回の話し合いと同じ回答が山根よりなされた。

カ 月謝単価ごとの歩合の割合について明示して欲しいとのQの要望については、山根より「重要事項なので、その書類をそのまま渡すわけにはいかない」という返答がなされた。一方で、江頭は、「給与体系という部分も、基本的に資料で最初に渡して理解して受けていただいていると思っている」との齟齬のある回答がなされた。

キ 江頭は、この話し合いにおけるQの要望に対して、「今日のこの話した内容に関しても、Qさんがこのレッスンに関してどうするかということも、どのように仰っているかにということも上と相談させてもらう」と発言している。

ク 話し合いの結果、Qの要望について江頭及び山根から曖昧な形でしか返答されず、レッスンは強制ではないが「受けなくてよい」との回答は得られなかったため、結局、Qは疑問について納得できないままとなった。

(3)4月29日の山根との話し合い

ア 江頭が「上」と相談すると応じたままで両者の話し合いの結論は出ていなかったにもかかわらず、山根はQを事務所外のコーヒーショップに誘い、レッスンを受けるよう説得した。 

イ Qが「それならば、レッスンを見学に行きたい」と発言したところ、山根より「見学する必要があるのか」ということを繰り返し言われた。Qが「そちらがそこまで受けて欲しいというならば一度見学してみたいと思うのは自然ではないか」と発言したところ、山根は「そもそも受けることになっていますから」と回答した。

ウ その返答に対し、Qが「それは強制と受け取っていいですか」と発言したところ、山根はそれには応えず「それは脅迫ですか」と応じた。

エ Qが「そもそも受けなかったらどうなるんですか」と質問したところ、山根は「君のそうやって追及して白黒させるのが、人をいらだたせるんだよ。他の事務所は分からないが少なくとも九州では、むかしからこの方針なんだ。というか他の企業に行けばいいじゃないか。お互い不信感だらけなんだから」と応じた。
 
オ Qは被申立人に対して契約内容について疑問を持ち、直接の上司にその旨を訴え要望したが、最終的に「上」に相談するといった曖昧な結論で終わった。しかも、山根は、「研修やレッスンを受けないのであればQのレッスンを視察する」との根拠のない嫌がらせ的発言をなした。

(4)小結
 Qは、2007年11月に採用通知を受け、4月から正式契約であったにもかかわらず、講師不足という被申立人の都合により、急遽2008年1月から3月まで講師として働いた経緯がある。この間の契約は、Qの書面で契約を結んで欲しいという要望にもかかわらず、臨時的アルバイトということで、有料研修も促されず、講師研究会の会費なども天引きされないままであった。そのため、4月に正式契約された直後の講師会合において、これまでなされてこなかった研修はじめ生徒レッスン以外のさまざまな行事や業務が課されてきたことについて、改めて契約内容や業務に対する対価について疑問を持ったものである。
 Qにとっての疑問というのは、報酬のない「業務」が存在すること、研修費が報酬から天引きされるといった経済的切実さゆえの要望であり、被申立人カワイ音楽教室で働くことそのものへの異議では全くなかった。Qは、被申立人に異議を唱えることが、働き続けることに支障を被ることに懸念がありながらも、報酬から天引きされた残りの報酬と時間的拘束を照らしたとき、生活を維持することができないというせっぱ詰まった状況であった。その上で、Qは労働者として正当な疑問、異議を一人の講師として被申立人に異議を申立たものである。
 しかしながらその異議申立は、江頭や山根によって曖昧にしか応答されず、研修を受けないことが不利益な取り扱いとなるのではないか、また、研修を受けることを迫られることなどによって、精神的にも将来的な保障的にも不安に追い込まれることとなった。
 このことは、Qの講師としての正当な異議申立を、江頭や山根が正当なものとは受け止めず、正当な理由も根拠なく、研修を強制する応答でしかなかったのである。ひいては、山根、江頭はQの異議申立を疎ましくとらえていたことは明らかである。


2.Qの申立人組合加入公然化と団体交渉要求

(1)Qの組合加入と申立人による被申立人へのはたらきかけ
ア 7月1日、Qは、山根及び志岐より7月10日までに講師研究会への参加についての合意書に押印することに加えて、レッスンや研修を受けないのであればテストを行うことを伝えられたため、申立人組合に加入することを決意した。

イ 7月4日、申立人組合は、被申立人九州支社音楽教室指導主事である福井寿行(以下、福井)に電話で、Qの組合加入を通知した。その際、福井はQの組合加入についての疑義などは何も述べることなく、申立人の電話での要求に応じた。

ウ その上で、申立人は@講師研究会の加入の任意、A研修及びレッスンは任意であること、B給与から天引きされた会費などは返還することを要求したところ、福井はそれらをすべて認め、両者で確認した。

エ しかしながら、7月9日、被申立人は課題曲を録音したテープを提出することを要求し、8月6日山根はQに対してテープの提出を求めた。

オ 8月8日、申立人は、改めて福井にその真意を問うたところ、録音テープでの指導は行うが、これを出さないことでQの就業条件や契約更新に影響を与えることはないと明言した。

カ ところが、8月10日、被申立人は、最終的に研修を受けなければ課題曲をテープ録音して送ることを要求したものである。申立人及びQは、この事態を解決するために被申立人との団体交渉を要求し、直接権限のある被申立人との話し合いの場で解決することを決めた。

(2)小結
 被申立人福井は、申立人からの要望に対して認める発言をしながらも、結果として研修を受けなければ課題曲を録音したもので講師の能力をチェックしようとしたものである。こういった契約時には確認されなかったことを行うことは、Qが研修を受けないということに対する嫌がらせ的行為であり、一旦、確認された申立人に対する応答を反故にしたものであり、不当労働行為である。


3.被申立人の「話し合い」という名の交渉拒否の欺瞞と不当労働行為性

(1)申立人の要求に応じた11月20日の「話し合い」
ア 被申立人は、10月30日付申立人要求書に対して、「話し合い」であって団体交渉ではないという主張をなしながらも、11月20日被申立人事務所において実質的な申立人との団体交渉の場が設定された。被申立人出席者は、九州支社総括課長別府正敏(以下、別府)、地域推進室音楽教室担当課長橋本健次、福井で、この件については、本社に話が報告されているとのことであった。

イ 契約の更新に関して、申立人組合員竹森真紀(以下竹森)より、来年も契約を更新したいと希望した場合には、ほぼ更新されるのかという質問がなされた。それに対して橋本は、講師に改善すべき点が無い場合にはほぼ更新されるということ、また、改善すべき点がある場合は面接を2、3回行ったうえで、来季の契約についての方向性を決めるという旨の回答をなした。

ウ 契約の更新の判断は最終的には誰が行っているのかについて、組合員丸田が尋ねたところ、それらは各事務所の裁量で行っているとの回答が橋本よりなされた。

エ Qは、この「話し合い」の場において、来年の契約条件に対する希望を伝えた。なお、Qの希望は「仕事をたくさんほしい」というものである。橋本は「(希望を)お聞きするのは大丈夫ですが、100パーセントは難しい」としながらも、Qの来年度の希望について聞き取りを行い、最終的には福岡事務所で判断がなされると述べた。

(2)「弊社の見解」(1月24日付)について
 冒頭で述べたとおり、1月24日、被申立人は、11月20日の話し合い後の12月18日付申立人要求書に対して、Qの契約更新が困難であるとの「弊社の見解」を出した。

(3)被申立人による契約更新のための面接という名のQへの批判

ア 被申立人は、Q以外の講師については、11月時点で「面接」を行っており、第1回目の「話し合い」において、被申立人は契約更新の方向でQより来年度の要望を聞いたにもかかわらず、1月26日付「見解」文書(甲7号証)において、「これまでのQ講師の生徒への対応を聞き及んだ限りでは、契約更新は困難であると思われますが、いずれにしても、本人と面談をし所定の手続きを経たうえで決定します」とした。
 
イ 申立人としては、Q以外の講師については、被申立人との「話し合い」の場で来年度の契約更新についての確約がなされるものと了解していたことさえ、反故にされたとの認識を持ったが、「面接」を開催することで契約が更新されるのであればと早急に「面接」の開催を要望した。

イ 2009年1月30日、被申立人天神事務所の山根、志岐、江頭によって面接が行われた。Qは、「来年度は生徒を増やして欲しい、筑紫野よりも遠くの勤務地は避けて欲しい」との希望を述べた。

ウ 被申立人はQの希望については聞き置く程度の対応で、唐突に、山根より「(Qは)事務手続きが出来なかった」という指摘をなされた。Qが「音教を外れたので、事務処理はしなくていいと思った」と答えたところ、山根は「そんなことはなく、Q先生が事務が出来ないので中村さんがするということにしました」と応じた。

エ 4月の契約前のことにもかかわらず、みかさ幼稚園で園長から「オルガンの並べ方が悪い」、「カスタネットがピアノの上に置きっぱなしになっていた」というクレームが寄せられたということで、Qは面談の場で山根より叱責された。

オ 受け持った生徒が辞めた理由について、Qが「情緒不安定なところがあった」と答えたところ、「大学の講座などを受講するなどして、そのような子どもへの対処方法を学ばなかったのか」と山根より問い詰められた。

カ 体験レッスンの生徒獲得率がQは3割程度であったことに関して、体験レッスンは受けたが生徒にならなかった人たちに、その理由を聞いたかどうか、Qに問い詰めた。
 それに対してはQは、理由を問い合わせるようなことはしなかったと回答した。

キ 「面接」は契約更新のための希望を聞くばとしてもうけられていることがこれまでの通例であったにもかかわらず、被申立人は、この期に及んでこれまで一度も忠告したことのない内容で、Qを叱責するように詰問した。


(3)「弊社の見解」及び「面接」実施後の話し合い(1月31日)

ア 申立人組合員小野(以下、小野)が契約更新の判断に付いてカワイに質問したところ、「契約更新に付いては、現場(福岡事務所)の判断が大きい」ということ、また、判断はQを「面接した三者の合議で決められる」と橋本は回答した。

イ 小野が、「回答書は(甲7号証)、どういった機関で決定され出されたのか」と問うたところ、別府及び橋本は、本社と連絡を取って文書を作成したこと、また文書には支社長の判断が入っていると応えた。

ウ さらに契約更新について、小野と橋本の間で次のようなやり取りがなされた。
小野「契約の履行に、それを妨げるような重大な原因が見つかったり、それを解決することは不可能だということが無い限り、原則としてですね、これは講師の希望を聞きながら、できる限り講師の希望を聞き入れて、更新していくのが前提ですよね」
橋本「そう・・、そうですね。あとは事務所の運営上の、教室がどんどん無くなっていくとか、いろんな問題もありますけどね」

エ 回答書(甲7号証)における、「生徒への対応等を聞き及んだ限りでは契約更新は困難」というのは、誰が判断したのかということを小野は質問したところ、橋本は「誰がとかではなく、総合的に」という回答をなし、その後もはっきりとした回答はなされなかった。

オ 契約更新が困難と文章に書く決定的な材料は何かという小野の質問に対して、橋本は「総合的に・・」とのみ答え、具体的に明示されなかった。

(4)2月13日の話し合い
ア 2月13日の話し合いにおいては、別府、橋本、福井に加えて北川九州支社長(以下、北川)も出席した。北川は、天神事務所から報告を受けて判断する責任者が自分であると発言した。

イ Qの契約更新に関しては、北川は「契約更新はできませんという文書をだす予定である」と発言した。そして、この判断の責任者は北川であるということを認めた。

ウ 北川はQとの契約に関して、「3月の段階で幼稚園の園長から講師を変えて欲しいというクレームが入って、正式な契約はやめたほうがいいんじゃないかと担当のものに話していたが、現場のほうから先生の数が足りないとの意見が出されたため、やむをえずQと正式な契約を結んだ」と述べ、契約を更新しないという判断に、契約前のアルバイト雇用の期間での「クレーム」が関連していることを認めた。  。

エ 契約を更新できない理由については、「生徒さんが増えて欲しいとか、もっと成長して欲しいという期待度があったが(中略)そこまでいかなかったのが」一つの要因であると、橋本は回答した。しかし、その根拠となる事実についての説明はなされなかった。

オ 橋本より契約を更新しない理由は、体験レッスン後の入会率であるとの説明がなされた。入会率は通常8割程度であるが、Qの場合は11人中4名と入会率が通常よりも下回っていたことである。何割という客観的な基準はあるのかと小野が質問したところ、それに対する具体的な回答は無かった。なお、北川は「生徒を確保しろとか言った指示は、一切していない」と発言している。

カ 橋本より、契約を更新しない理由は、生徒の出席率が低いからという説明がなされた。それに対し、小野が「他の講師と比べて、分かりやすいくらい出席率が低い」のかと質問したところ、橋本は「報告ではちょっと、そのような傾向が大きいんではないか」と答え、実態を把握しているわけではない旨の発言をなした。

キ 竹森が契約を更新しない決定的な理由は存在しないことを指摘した際に、北川は「デジタル式にはっきり物事を表示せよという表現ができない」と回答した。

ク 北川は契約を更新しない理由について「信頼が少なくなった」ことを要因にあげている。

ケ 北川は、理由にならない理由を挙げながらも、Qの契約更新について「見直す」姿勢は見せなかったにもかかわらず、話し合いの最終場面において、北川は申立人に対して「補償金という形でQさんの年収の半年分に当たる金額を支払う用意がある」旨を発言した。


(5)小結
ア 11月20日の「話し合い」では、Qの契約更新がなされない理由となるようなことについては、一切、話されなかった。(2)で述べたように、Qの希望を被申立人が受け止め、来年に活かす方向での話し合いがなされたのである。にもかかわらず、被申立人は、「面接」すら行わないままに「弊社の見解」において、唐突にもQの契約更新が困難であるとの認識を示した。11月20日の話し合いの経過からふまえても、この見解が不当労働行為であることは言うまでもない。
イ さらに、1月31日、2月13日と2回の話し合いにおいて、被申立人はQの契約を更新されないという判断について、その具体的な根拠を示すことはできなかった。
 2月13日「話し合い」の場において、北川は「8人契約を更新しないこととなった」と発言している。しかし、本年度、契約の更新を希望しながら、更新がなされなかった講師は福岡事務所においてはQだけである。このような事例は3年で9件であるという事を考えると、それは例外的な事柄であるということができる。そうであるならば、当然、相当な理由が存在していると考えるのが当然のことである。しかし、会社が示した理由は、その根拠が曖昧かつ恣意的であり、それに値するほどのものではない。
 すなわち、第3回目の話し合いにおいて出されたQを契約しない理由は、明らかに後付け的に、Qを切るために上塗りし、とってつけただけの理由でしかなく、委任契約を雇用契約として異議を申し立てたQ及び申立人を嫌悪しようとするための理由に他ならず不当労働行為である。



5 結語
 これまで述べてきたことでわかるように、既に4月の段階で、山根はQに対して「他の企業に移ればいいではないか、お互い不信感だらけなんだから」という発言をなしており、Qに対して悪印象を有していることが伺える。契約更新は、面接を行った3者の判断が非常に大きいことを考えると、このような印象が大きく影響していると考えられる。
したがって、契約を更新しないことは会社のシステムに対して疑問を呈しているQを排除しようとする意図が存在していると推認され、それが不当労働行為にあたることは言うまでも無いことである。
 被申立人は、申立人による「有料研修の不当性」や「講師研究会の会費天引き」などの指摘については、その非を認め撤回し、これを受容した。このことは、被申立人のなしてきた有料研修及び講師研究会加入などが被申立人の言う準委任契約とは相容れないにシステムであることを認めたことに他ならない。
 また、Q個人の異議申し立てには応じなかったにもかかわらず、申立人組合からの要求には応じるという自らの主張を恣意的に運用した対応となっている。その恣意性そのものが、被申立人の主張の曖昧さであることは間違いない。
 さらに、これは、組合からの団体交渉に応じないと言いつつ「話し合い」には応じるという姿勢に、ねじれが現れているものである。このことは、第1回目の「話し合い」での被申立人の発言にわかるように、委任契約のままでのQの就業条件の改善には応じるが、雇用関係であるとの要求には応じずに解決を図ろうとしたものである。したがって、被申立人はこの時点においても、準委任契約のシステムに不適切な内容が存することに気づきながら、これを隠蔽しQの契約内容においてのみ改善できることを話し合うことで、当面の「解決」をはかろうとしたことに他ならない。
 このことは、事実上の申立人による団体交渉の要求に応じながら、「話し合い」との詭弁によって自らの委任契約の違法性すなわち労働者性を覆い隠した行為であり、不当労働行為である。



第4 答弁書に対する認否及び反論
 答弁書第2の2、3において、否認ないし争うとされている部分については、全て否認ないし争う。ただし、答弁書2の2(3)ウについては、準備書面(1)第2の5(4)に書かれているとおりである。



第5 求釈明事項

1.今年度(2009年度)の講師契約書を開示されたい。
2.北川元九州支社長の退職理由を明らかにされたい。
3.本件について会社権限をもった責任ある役職名を明らかにされたい。

以上

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